ゴミ屋敷での奮闘⑤ーただただ耐える

公園に寝泊まりしていたご婦人さんのゴミ屋敷を片づけさせてもらえることにはなったのですが、ご本人の心が定まり切らないこともあり、全く事態は解決に向けて進んではいきませんでした。

11月に差し掛かって本格的な冬の到来が感じられるようになってきていました。とにかくお宅で寝られるようにしないと凍えて命も危なくなってしまいます…。

続きを書いていきます。

前回までの話⇓

 

かかってきた電話

この当時、ご婦人さんが寝泊まりするのは、半分が公園、半分がご友人たちのお宅になっていました。ご友人たちのお宅に泊まられているのは、公園で寝泊まりするよりかは安心なのですが、そのご友人たちというのもとてもややこしい方々だったのです。泊まられることの見返りとして食品や金銭を要求するようになり、エスカレートして今度は寝泊まりしてもいないのに食品や金銭を要求するようになっていきました。ご婦人さんは生活保護を受けていて決して金銭的に余裕のある状況ではなかったので、さらに貧しくなっていったのでした。

とにかく早くお宅で寝られるようにしないと、生命に関しても人間関係に関しても家計に関してもよろしくありません。

しかし、お願いをしてもらって片づけの約束ができたとしても3回に2回はドタキャンされる状況であり、事態の解決は進んでいかない…。

そんな時、私坂口にご婦人さんから電話がかかってきました。

 

ご婦人「坂口さん、もう私つらくなっちゃった…。家族もめちゃくちゃだし、だまされ続けているし、おまけに住むことができる家がないなんて…。」

坂口「それはとてもしんどいですね…。色んなことががんじがらめになって、すべてを一度に解決していくことはできないので、まずはお部屋の片づけを本腰いれてやっていきませんか?」

ご婦人「私の人生は何も恵まれないものだったの…。」

悲しい事はよくわかるのですが、私の話は全く聞いてはくれません。

 

ご婦人「アパートを追い出されたら私どうなるのって福祉課の方に聞いたら『老人の介護施設があるから安心してください』って言われたんだけど、そんなとこ絶対に嫌なんだよね!!お他人さんと生活するなんて考えられない!!」

坂口「色んな人がたすけてくれているじゃないですか…。そうして面倒を見てくれるって、ありがたいことではないですか…。介護施設が嫌なら、なおさらお部屋の片づけを頑張りましょう。」

ご婦人「介護施設は嫌ぁあああああ!!!!」

あぁどうか、話を聞いておくれ…。恩を頂いて生きているということを分かっておくれ…。自らの癖性分でアパートを追い出されそうなことを自覚しておくれ…。

 

ご婦人「もう電車に飛び込もうと思うの…。」

このように、大変なことをほのめかしてらっしゃいます。実はこのような電話が毎日のようにかかってくるのでした。

そしてこの日はよっぽど色んなことが起きていたようです。ご友人にはお金をたかられるわ、アパートの管理人さんには怒られるわ、福祉課の方には厳しいことを言われるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご婦人「ねぇ坂口さん、私は老い先が長くないから、手をつないで一緒に寝てくれない?あなたのお部屋に泊めてくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはアカン…。

 

 

 

 

 

 

 

坂口「それはなりませぬ。」

ご婦人「なんでよ!!あんた人をたすける修業してんでしょ!!あんたのとこに泊めなさい!!一緒に寝なさい!!」

坂口「なりませぬ。」

ご婦人「あんたいい加減にしなさいよ!!わかりました!!もうガソリン被って自分に火をつけます!!!!」

坂口「ご婦人さん、それもなりませぬ…。」

ご婦人「うるさい!!明日ニュースになったらあんたのせいだからね!!」

親神様・教祖の伝えてくれたこと

自らの命を絶つ言動をなさる方に対して、反論したりあおったり、刺激するようなことはできないのです。行動に移す方もいらっしゃいますから。

そして何より、ご婦人さんの一時の欲求を満たすこともできないのです。彼女を悲しませる身上・事情は心の癖性分が引き起こして起きてきたものであり、彼女の一時の欲求を満たすということはつまり、その心の癖性分を増長させるものであったので。

ただただひたすらに話を聞き、耐えておりました。

そして以下のように、親神様・教祖の伝えてくださったことから考えていたのです。

魂が堕ちてしまわないように

親神様・教祖がおふでさきとして残してくださったお歌があります。

たん/\とをんかかさなりそのゆへハ

きゆばとみへるみちがあるから

おふでさき 第八号 五四

わたしたちは何も意識をしなくても心臓が動き息ができ、体は親神様から貸してもらえて命を保つご守護をいただき続けています。親神様はない人間ない世界をつくってくださってから、1分1秒あますことなく親心をかけ続けています。人間の頭では計り知れない恩を親神様・教祖からいただいています。

多少、我さえ良くばの心で人に迷惑をかけるような生き方をしてもすぐに悪いことが返ってこないのは、親神様・教祖が子供である人間が可哀そうと思って返ってこないように止めてくれてるからでありまして、こうしてまた、計り知れない恩の上に、人間は我さえ良くばの心で恩を重ねていってしまいます。

この恩をわからずに、恩をいただき続けるような行いをしていけば、大きな苦しみが返ってくるような悲しみの運命がまっています。それでは可哀想で仕方がないから、親神様は生まれ更わりの際に牛馬までおとして人の役に立つ道中を送らせ、十分に魂に徳を積めたら人間に生まれ更わらせると伝えてくれています。

ご婦人さんも様々な恩を受け続けての今でした。これ以上、恩が重なってしまわないように、彼女の一時の欲求を満たす願望は満たして差し上げることはできませんでした。牛馬の道に堕ちてしまわないように。

またぶり返してしまわないように

ご婦人さんの悲しみの身上・事情は解決されていないわけですから、一時の欲求を満たしたところで、また悲しみが襲ってきてまた一時の欲求を満たそうとしてしまいます。ぶり返してしまう。

なにより、自分のやりたいように生きてきたから、つまりは自分の悪い癖性分どおりに生きてきたから今の状況なわけで、一時の欲求を満たすということはつまり、癖性分を加速させてしまうのです。

今は、身上・事情の解決に目を向けていかなければ、そして根本的な原因である心の癖性分を天の定規に沿って直していくことに目を向けていかなければ、たすかりの道へ続いていくことはできないのでしょう。

よって決して一時の欲求を満たすことはさせるわけにはいかなかったのです。

神様のお手入れであると悟っていけるように

ご婦人さんの状況は、身上・事情ともに悲惨なものであり、本人がしんどいのは理解できるものでした。

もし私が同じ状況になったとしても、絶望していたのだろうと思います。

常識ではどうしようもないもの、人間の力ではどうしようもないもの、そういうものにこそ、親神様・教祖への信仰の力が大切だと思うのです。

ろくでもないことが起きてきます。

なんで自分だけがと思ってしまうようなことが起きてきます。

そのままいったら絶望するだけです。

しかし、

「親神様・教祖だけは、ない人間ない世界をつくってくださってから、ずっと親心をかけ続けてくださっている。起きてきた悲しみの身上・事情は、自分が何回もの生まれ更わりを通して魂に積んできた悪い種を切り、そして汚れたほこりいっぱいだった心を入れ替えて、人をたすけて良い種をまいていき、本当の意味での陽気ぐらしへ向かっていけるように、親神様・教祖がしてくれているお手入れである。」

と悟れていけたなら、悲しいだけだった身上・事情は、先々で花を咲かせる陽気ぐらしへの種まきへと変わっていきます。

親神様・教祖がおふでさきとしてお歌を残してくださっています。

月日にハみな一れつハわが子なり

かハいゝばいをもていれども

おふでさき 第八号 六〇

一れつハみなめへ/\のむねのうち

ほこりいゝばいつもりあるから

おふでさき 第八号 六一

このほこりすきやかそふぢせん事に

月日いかほどをもふたるとて

おふでさき 第八号 六二

月日にハせかいちううのこどもわな

かハいばかりをふもているから

おふでさき 第一七号 四九

それゆへにせかいちううをどこまても

むねのそふぢをしたいゆへから

おふでさき 第一七号 五〇

悲しみの身上・事情は今まで魂に積んできた種を鏡のように親神様・教祖が映してくれたものであり、心のほこりの掃除を促してくれているものであると伝えてくださっています。

子供である人間が可愛くて仕方がなくて、人と人とがたすけあって魂がたすかっていく、本当の意味での陽気ぐらしへ向かっていってほしい親心の現れだと伝えてくださっています。

 

ろくでもない身上・事情が起きた時に、ただ悲しい苦しいで終わるのではなく、親神様・教祖の親心が悟れて「ありがとうございます。」と思えた時に、魂のたすかりがはじまっていきます。

 

このことをご婦人さんにお伝えしたいのだけれども、今はきっと心の余裕がなくて聞いていただけない…。

心の余裕ができて聞いていただけるまで、私は話を聞いて耐えるのみ…。

そう思っておりました。

 

この時の電話は1時間半続きました。めっちゃキツかった…。

それでも我々は進んでいた

本格的な冬が到来しようというのに、片づけはドタキャンされまくり、ご婦人さんはパニックのようになり、事態は全然進んでいるようには見えませんでした。

しかしながら、3回に2回はドタキャンされていても、3回に1回は掃除を進めることができていたのです。ご婦人さんは「これは捨てたくない!!」など仰っていたばかりで事実上あまり動いてはいなくとも、むしろ進捗を止めてしまっていたけれども、私は動くことができていたのです。

1回あたりゴミ袋を20個ほど出すことができたというのに、ゴミ屋敷の1%も片付いているようには見えなかったほどにゴミ屋敷は強烈なあり様だったのですが、それでも我々は、少しずつ少しずつ、進んでいたのです。

玄関のゴミの山が無くなり、そして隣接するキッチンだったはずの場所に、人が寝られるだけのスペースが確保されました。

 

 

そしてやっと、私はご婦人さんにお話ができたのです。

 

そのお話は、またいつか書いていきます。

続きです↓

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